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 台湾パイナップルは「芯まで食べられて、ピリピリせず、美味しい」けど高い、という印象だと思います。東京都心だと、フィリピン産は298円、台湾産は安くても598円(1玉。もちろん大きさにもよります)、というのが相場でしょうか。倍の差があるのは、そもそも現地での出荷価格が大きく違うからなのですが、見逃せない要因が輸入関税です。日本とASEAN諸国の間では00年代に経済連携協定(EPA)を締結しているので(次節で詳述)、フィリピン、インドネシアおよびタイ産パイナップルは、皮つき1玉900g未満のもので、関税割当数量以内であればゼロ関税ですが、台湾産は台湾がWTO加盟国でしかないので17%の輸入関税がかかります。

日本向けパイナップル
2020年輸出量とシェア
2020年の単価(CIF
+関税率
フィリピン152,970トン(97.4%)84円/キロ+0%
台湾2,144トン(1.4%)158円/キロ+17%184円
インドネシア970トン(0.6%)75円/キロ+0%
パナマ576トン(0.4%)63円/キロ+17%74円
コスタリカ274トン(0.2%)74円/キロ+17%87円
                         財務省 貿易統計より

 台湾の代表的な輸出向け農産物、冷凍枝豆だと主要輸出国に中国が入ってくるのでより比較しやすいです。1990年頃まで日本に輸入される冷凍枝豆はほぼ全量が台湾産でしたが、曲折がありながら(冷凍枝豆の関税率は基本10%ですが、95年にタイとインドネシア、01年に中国、02年に台湾、07年にベトナムがWTOに加盟して6%になりました。07年に日・タイ、08年に日・インドネシアと日ASEAN、09年に日・ベトナム間のEPAが発効し、現在この3か国産の冷凍枝豆はゼロ関税で輸入できます)、昨年は台湾産のシェアが44%、タイ産と中国産のシェアが20%台になっています(下の表を参照)。ゼロ関税のタイ、インドネシア、ベトナム産、そもそも安価な中国産に対し、台湾産冷凍枝豆は高価格ながらも品質の良さで勝負して、中国産に奪われたシェアを取り返した、と言えます(実は、中国や東南アジアにおける日本向け冷凍枝豆ビジネスにも「台商」とよばれる台湾系企業が深く関わっています)。なお、20年11月に署名、早ければ21年末の発効が見込まれるRCEP(地域的な包括的経済連携協定)では、中国産冷凍枝豆の輸入関税を段階的に下げて発効後11年目に撤廃することとされ、台湾産がさらに厳しい競争を迫られることが予想されます(ここでRCEPについては深堀りしません。なお、TPP加盟国であれば冷凍枝豆の関税率は2%になります)。

日本向け冷凍枝豆
2020年輸出量とシェア
2020年の単価(CIF
+関税率
台湾31,076トン(43.7%)244円/キロ+6%259円
タイ20,240トン(28.5%)226円/キロ+0%
中国16,612トン(23.4%)183円/キロ+6%194円
インドネシア2,738トン(3.8%)227円/キロ+0%
ベトナム457トン(0.6%)180円/キロ+0%
                         財務省 貿易統計より

 中国にとり、台湾を中華人民共和国の施政権が及ぶ「台湾省」として統一することは「核心的利益」であり、台湾経済(企業・産業)を中国の巨大市場やコストの安い製造拠点に依存させて両岸経済の一体化を進めることはその目的に適ったことです。国民党馬英九が総統だった時代、2010年には、台湾とECFA(中国・台湾海峡両岸経済協力枠組み協定。実質的な自由貿易協定)を締結しました。一方で台湾と国交を持つ国々と国交を結び(中台双方と国交を結ぶことはできないので、台湾との断交を意味します)、「一つの中国」の原則を主張しながら、台湾の自主的な外交の空間を奪ってきています(21年12月現在、台湾と国交のある国は小国ばかりわずかに14か国。16年5月の蔡英文総統就任時には22か国でした)。

 日米は1972年の台湾との断交以降も、台湾との緊密な関係を保っていますし、台湾は半導体やEMSをはじめ、エレクトロニクスのグローバルなサプライチェーンにおいて極めて重要なポジションにあります。また、台湾は自由主義陣営が中国の海洋進出を抑えるためにも、日本のシーレーンを維持するためにも、死活的に重要な位置にあります。しかし、その台湾産物品を日本に輸入する際には、中国産物品と同等、ASEAN諸国産物品よりも高い関税を課される、という辛い立場にあるのです(逆もまた然りで、台湾に日本の物品を輸入する際にも高い関税が課され、台湾の消費者も不利益を受けることになります)。

 台湾はTPP(環太平洋パートナーシップ)への参加を希望しています。トランプ政権時に米国が離脱したので、日本はTPPの中でもっとも経済的規模の大きな国なのですが、中国の反発を考えると台湾の参加を支持しづらい状況にあるのはご存知の通りです(台湾のTPP参加に絡めて言及されがちな、福島等5県産食品の台湾の輸入禁止問題についてはここでは触れません)。

 去る4月16日の日米首脳会談の共同記者会見で、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する」と52年ぶりに「台湾」が明記されたのは記憶に新しいところであり、自由貿易の枠組みに台湾も組み込まれる動きに期待したいです(弊社が輸入する台湾産フライドピーナッツの輸入関税は21.3%にのぼります…)。

参考記事1(繁体中国語):
【枝豆からパイナップルを眺める】日本向け輸出8割のリスクを怖れないワケ
(上下游News&Market 21/3/5)
 
 中国語ですが、細かいデータも含まれています。肝心の関税について触れられていないのが玉に瑕です…

参考記事2:
2021年1月の冷凍野菜輸入量は16.8%減、減少傾向加速か、主要品目は軒並み1~2割減、全品目で単価下落
(食品産業新聞 21/2/26)

 以下、抜粋ですが、コロナによる外食需要の減少が大きく影響している様です。
> 枝豆は25.3%減、9カ月連続の前年比マイナスとなった。トップシェアの台湾は29.0%減、中国は32.5%減、ともに9カ月連続のマイナスとなった。タイも9.3%減と6カ月連続のマイナス。平均単価は2.8%安の220.1円。

参考資料:台湾が締結するFTA等

1台湾・パナマ自由貿易協定(17/6 断交)自由貿易協定04/1 発効
2台湾・グアテマラ自由貿易協定自由貿易協定06/7 発効
3台湾・ニカラグア自由貿易協定(21/12断交)自由貿易協定08/1 発効
4台湾・エルサルバドル・ホンジュラス自由貿易協定
(18/8、エルサルバドルと断交)
自由貿易協定08/3 発効
5中国・台湾海峡両岸経済協力枠組協定(ECFA)自由貿易協定10/9 発効
6台湾・ニュージーランド経済協力協定(国交なし)自由貿易協定13/12 発効
7台湾・シンガポール経済パートナー協定(国交なし)自由貿易協定14/4 発効
8台湾・パラグアイ経済協力協定特恵貿易協定18/2 発効
9台湾・エスワティニ経済協力協定特恵貿易協定18/12発効

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