台湾に日本の食品を輸出する案件を進めています(止まらない円安台湾ドル高で台湾ピーナッツの輸入価格が大幅に上がってしまったので、日本から台湾への輸出も扱い、海外送金に係る費用を少しでも減らしたい、という思惑もあります)。11年前の福島原発事故以降、台湾は福島、群馬、栃木、茨城、千葉の5県産食品の輸入を禁止して来たので、日本食品の輸入に際しては都度、当該食品が上記5県産ではないことを証明する「原産地証明」が求められます。原産地証明書は商工会議所に発行してもらうのですが、商工会議所の会員になれば原産地証明書発行に係る手数料を大幅に抑えられることもあり、昨朝、商工会議所に電話で諸々問い合わせをしたところでした。そして昼、関連情報をチェックしていると「福島食品輸入解禁に向け日本と協議。情報筋:明日の決定ない」(22年1月26日の自由時報。中文)との台湾のニュースが… 直近で事態は大きく動いていたのです。
民進党はそもそも科学的でない5県産食品輸入禁止解除に積極的だったのですが、国民党は一貫して解除反対、「核食」などとレッテルを貼り、政争の具にしてきました。民進党・蔡英文総統が16年に就任して以降も進展はなく、18年11月の国民投票でも有効投票数の78%もの賛成票を得て「5県産食品輸入禁止措置2年間継続」が決まりましたが、21年に入ってイスラエル、シンガポール、米国が規制を撤廃し、輸入禁止を含む規制を残すのは僅かに中国(香港、マカオも)、韓国および台湾だけになっていました(外務省PDF「東京電力福島第一原発事故を受けた諸外国・地域の輸入規制」)。今回の解禁の進展が台湾のTPP加盟問題とリンクしていることは言うまでもありません(本ブログ・21年9月30日「台湾のTPP加盟申請について」参照)。
(大きな声では言えませんが)商工会議所の原産地証明書は厳密に原産地を確認した上で発行されるものではありませんし、東京や埼玉で製造(最終加工)された食品であっても、5県産の食材が使われている可能性は十分にあるでしょう(醤油だって関東の大手メーカー4社、すなわち全国売上上位4社は全社が5県、千葉と群馬に工場を置いています。最大手キッコーマンは千葉県野田市のほか北海道と兵庫にも工場がありますが)。コロナ前は台湾からの多くの観光客が成田空港を利用し、浦安ディズニーリゾートに押し寄せていたのですから、11年間の「政治的な」輸入禁止措置はいったい何だったのだろうか、という感想しかありません。